2015年12月07日

天井で守る虎

こちらでご紹介したソウルの木人博物館ですが
天井に虎の絵が描かれた大きな布が貼ってありました。

さて、こちらどういう意味でしょう?

木人博物館 キュレーターの劉さんが教えてくれました。
かつて韓国では虎は魔除けの力があると考えられて、
お嫁入りの時、新婦さんの乗った輿の屋根に
虎の皮をかけたのだとか。
へー、そうなのですか…。

ということは天井の虎は、きっと博物館の空間を
大の字になってしっかり守ってくれているってことですね。

背景にある思想や文化を知ると
それがただのオブジェではなくて
どういう思いでそこに掲げられたのかを慮るきっかけになりますね。
それは相手の理解につながるきっかけだったりして…、
とか、勝手に思っちゃったりして。

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posted by Lana-Peace at 00:21| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年10月26日

重要文化財 釈迦如来倚像   深大寺釈迦堂(東京 調布市)

先日訪れた東京 調布市の深大寺釈迦堂の
「釈迦如来倚像」は座って両足を地面におろしている姿です。
こちら重要文化財に指定されています。

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そこには平成27年奈良国立博物館開館120周年記念
「白鳳」展の説明板が掲げられていましたが
それによると両足を垂下する坐り方は
白鳳時代に流行したものだそうです。

そしてそちらには「7世紀」とありましたが
もう一つ掲げられていた別の説明板には
「天平5年(733)本山開創の頃の本尊仏と推定」との説明が。

細かいことはさておき
釈迦如来のお顔はとってもやさしい
ほっとするようなお顔でした。

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とにかく千数百年もの時を経て
こうして、大事にされてきたものって良いですね。

釈迦堂開廟拝観は午前7時から午後4時半まで。
神代植物園公園の深大寺門からも近いです。

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釈迦如来倚像
銅造 鍍金
白鳳時代
東京 深大寺
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2015年10月06日

「ときをかける器ロマン展 〜西と東 古代・シルクロードから現代まで〜」(東京富士美術館)

先日見た東京富士美術館の展覧会
「ときをかける器ロマン展 〜西と東 古代・シルクロードから現代まで〜」では
いろいろな種類の器が展示されていたのですけど、
その中に、亡くなった方の冥福を祈る気持ちが伝わってくるような
器がありました。
今日は印象的なものを3点ご紹介しようと思います。

なお、こちらの展覧会会期は今月18日、日曜日までです。

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2015年10月05日

こどもと一緒に行く美術館 東京富士美術館キッズルーム

東京富士美術館(東京都八王子市)は
本館ロビーのお手洗いの近くに、キッズルームがありました。
靴を脱いで上がれるようになっています。
赤ちゃんも、よちよち歩きのお子さんも
保育園・幼稚園くらいのお子さんも
みんな遊べますね。

ママやパパ達がゆっくり鑑賞している間、
じっと見ていられないこどもたちは
キッズルームで遊んだり、お絵かきしたり
そういう時間の過ごし方でも、いいですものね。
(もちろん誰かそばにいる必要はあるけど)

病気のお子さんのパパやママは普段、
育児、看病、家事、仕事に忙しくて、
とても心の滋養の時間を持つことは難しいかもしれないけれど
そういう非日常の時間を持って「大人の1人の時間」を過ごすと
いつもと違ったエネルギーを補充することができますよ。
きっと!

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こちらの美術館、創価大学の斜め向かいにあります。
帰りに美術館近くの八王子駅行のバス停に向かうと
学生さんがたくさん!
学生さんの帰宅にあわせてそういうバスがあるのかどうか、
たまたまなのか、わからないけど
帰りのバスは八王子駅までノンストップで
とっても楽々でした!
posted by Lana-Peace at 20:52| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「煙草を吸う男」(東京富士美術館所蔵)

先日見た東京富士美術館の常設展示から
印象的なものをいくつかご紹介してきましたが、
最後の1枚をご紹介いたします。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「煙草を吸う男」です。

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この口元の明かりの感じは「芸術」って感じですね。
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大の嫌煙家の私としては、この題材はまったくどうだか…と思うけど
でも、瞳の輝きに生命が宿っているような
闇の中に浮かび上がっている、人物の生命感が
すごく印象的だったので、ご紹介です。

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煙草を吸う男
Smoker
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
Georges de La Tour
1646年
油彩、カンヴァス
70.8×61.5cm
東京富士美術館所蔵
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※絵画撮影は職員の許可を得たものです。
posted by Lana-Peace at 20:33| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年10月04日

ヤン・ファン・ホイエン「釣り人のいる川の風景」(東京富士美術館所蔵)

こちら東京富士美術館所蔵のヤン・ファン・ホイエンの作品
「釣り人のいる川の風景」です。

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何だかすごくいいなあ。いいなあ。

近くに寄ってみると、これとってもよく描きこまれているのです。
たとえば画面の右下隅には3人の男性は網で魚をとっているのだけど
どれどれ、って水面の下の網の様子をうかがっている感じが
よく表れているでしょう。
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それから奥の小舟の人たちは話しているその雰囲気までもが
伝わってきそうだと思いませんか?
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そして左下の牛たちの表情はすごく穏やかで
漁をする人間のそばで、「我、関せず」って感じで
牛は牛の世界で生きている。
牛には牛の時間が流れている。
何だか牛が主人公って感じもしてくるのです。
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川岸に座っている牛の優しい眼差しは
「あなたには、あなたの時間がある。
 あなたは自分の人生を、生きなさい。」
って、静かに言っているみたい(と勝手に自分で想像したり)。
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草を食む牛の周りには草の1本1本まで
見て取ることができます。
まるで風が吹いたらそよそよ風になびくような
そんな草です。
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草にもそういう命が、この絵には宿っています。

決して快晴の澄み渡った空じゃないのに、
その空は、それが重苦しいわけでもなく。

そしてファン・ホイエンのこの絵、
人や牛、物の影がとてもきれいに描かれているのですよ。

普段気に留めない影。
でも影があるってことは、
そこに光を遮る何かが存在したってことだものね。
そしてその存在が消えれば、影も消えちゃうわけだけど。
あるはずのないものが、生まれる一瞬って
はかないけど、美しいなあ。

370年位前に描かれたこの作品、
深い含蓄と余韻を伴うものだから
会場の中を進んだ後も、もう1回そこに戻ってみたけど
やっぱり、惹かれる。
色合いもいいなあ。
ファン・ホイエンはどんなこと考えて、
この作品、描いたのかな。
ファン・ホイエンに会ったら、ぜひ聞いてみたいな。

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釣り人のいる川の風景
Riverscape with Fishermen
ヤン・ファン・ホイエン
Jan van Goyen
1644年
油彩、カンヴァス
100.6×134.9cm
東京富士美術館所蔵
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※絵画撮影は職員の許可を得たものです。
posted by Lana-Peace at 18:15| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

シャルル・フランソワ・ドービニー「ヴィレールヴィルの農家」(東京富士美術館所蔵)

こちら東京富士美術館所蔵の
シャルル・フランソワ・ドービニーの作品
「ヴィレールヴィルの農家」です。

海辺に向かったなだらかな丘の風景ですが

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左側に見える小さな白い点は
近付いてよく見ると、実は人。
白い手ぬぐいを頭に巻いているのか、
或いは白い帽子を被っているのか、
背負った籠をひとまずおいて
のどかに休息を取っているような様子。

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タイトルに「…農家」とついていますけど
東京富士美術館のHPの解説によると
「干潮時に、牡蠣や貝を採る女たちの姿を点景として、
磯の香漂う抒情を描いた大作。」のだそうです。
ふーん、そうなのか…。
こちらフランスの風景なのだけど、
なぜかそれは日本の昔の原風景のようにも見えてしまいます。

決して派手なモチーフではないけど、
なぜか、すごく惹かれる作品。

牡蠣や貝を採った後、重くなった籠を背負って
この丘を、歩いた人がいたんだなあ。
140年前、確かにそこに、
一生懸命生きていた人がいたんだなあって。

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ヴィレールヴィルの農家
Seaside of Villerville
シャルル・フランソワ・ドービニー
1870年
油彩、カンヴァス
106.0×216.0cm
東京富士美術館所蔵
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※絵画撮影は職員の許可を得たものです。
posted by Lana-Peace at 17:41| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

クロード・モネ「プールヴィルの断崖」(東京富士美術館所蔵)

クロード・モネについては、以前Lana-Peaceのエッセイ
取り上げたことがありますが
先日訪れた東京富士美術館には「プールヴィルの断崖」がありました。

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空と海が画面の大半だけど、私は奥にある崖の上の緑が
とても印象的でした。
切り立った崖の上を覆っている淡い緑は、潮風に負けない草花を
表しているのかな?
生命感が息づいている感じがしますよね。

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こちら2年前に訪れた大島の港から、私が撮ったもの。
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写真はリアルな場面を切り取ったはずだけど、
全然生命感が感じられない。

絵って不思議だなあ。

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プールヴィルの断崖
クロード・モネ
1882年
油彩、カンヴァス
59.0×71.0cm
東京富士美術館所蔵
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※絵画撮影は職員の許可を得たものです。
posted by Lana-Peace at 17:32| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年08月28日

鎌倉国宝館 星月夜のステンドグラスと和歌

鎌倉国宝館の建物は鉄筋コンクリートだけど、
白い高床式校倉風建築です。
きっと正倉院を参考にしたのだろうなあ。
さてその入り口扉には、大正・昭和に活躍された
小川三知氏の美しいステンドグラスがはめ込まれています。

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どうしてこういうデザインなのかと思いましたら、
どうやら「鎌倉」の枕詞となっている
「星月夜」にちなんだものだとか。
知らなかったなあ。

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随分素敵な話と思って、いろいろ検索してみたところ、
たどり着いたのが、国文学研究資料館の電子資料館のサイト。
こちらに宮内庁書陵部が所蔵している『永久四年百首 和歌上下』が
画像としてアップされておりました。
この中で86コマ目の画像に次の歌が詠まれています。
右端から2つ目の歌です。
崩し文字で書いてあるので、書き出してみるとこんな感じ。
「我ひとりかまくら山をこえゆけばほし月夜こそ嬉しかりけれ」常陸

この作者「常陸」とは『永久四年百首』の巻頭作者紹介のページ
常陸 肥後守 定成女 本名肥後 皇后宮女房とありますので
女性の詠まれた詩ですね。

どんな背景があったのかなあ。
ひとりぼっちで鎌倉山を越える時、
見上げた空には星と月。
明るい夜が心強いのか
あるいは自分が山越えする様子を天から見ているのは
星と月だけ、という状況が嬉しいとか、ありがたいとか…。
想像はいろいろ駆け巡るけど、
そんなことを考えて、改めてこのステンドグラスを見ると
すごく、奥深い感じがしませんか?
このステンドグラス自体に息づく命があるような
そんな気がしてきます。

月の色が白で、星が水色で、
その周りが黄色の濃淡。
陽光に照らされると、星と月は清々しく光り、
周囲の黄色のステンドグラスのおかげで
白い月は一層冴えわたった光を放つようです。

鎌倉国宝館にお越しの際は、
ぜひ、扉のステンドグラスにもご注目を。
posted by Lana-Peace at 00:58| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年08月10日

器に広がる夏〜花火と川底〜臨済宗建長寺派 稲荷山 浄妙寺 茶堂「喜泉庵」

浄妙寺の茶堂 喜泉庵では、抹茶とお菓子をいただきました。
お寺からいただいたパンフレットによると
こちら天正年間(1500年代)、僧が一同に茶を喫したところが
「喜泉庵」という名前だったそうで、その後、平成3(1991)年に復興し、
杉苔を主とした枯山水のお庭と共に開席されることになりました。

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こちら、中に入ると、趣のある受付。
立派な堂々とした梁の下、駕籠がぶら下がっているのは
思わず目を引きます。
立礼席でもよいですし、緋毛氈に座っていただくもよしです。
北側に設けられている円窓越しに向こうを見るもよし、
東側の開放的な枯山水を見るもよし。

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当日いただいた冷たい抹茶は
大きな花火の描かれたガラスの器でした。
抹茶をいただくたびに、花火の下の方まで顔を出してきます。

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訪れた日の前日は鎌倉花火大会の日でしたが
台風12号の高波、強風の影響で、
残念ながら中止になったそうなので
抹茶の器の世界の中で花火を感じるとは
何だか粋な計らいですね。

お菓子は涼しげな錦玉羹(きんぎょくかん)。
白餡で水草を表現しているとのことです。

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気持ちはだらだらしてしまいそうな暑い夏の日、
襖や障子戸が開け放たれて、向こうのお庭に目をやると
蝉の声と、風向きと共にほのかに漂う蚊取り線香の香りの中で
汗もだんだんと引いていきます。
その空間から一瞬、別世界に飛んで行けそうな、
そんな一時でした。
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2015年08月06日

鎌倉 高徳院の大仏

鎌倉 高徳院の大仏
正面像は観光ブックにもよく出ていますが、
南の由比ヶ浜海に向かって鎮座するその姿は
とっても堂々としています。

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でも、後ろに回ってみると、
なんだか寂しそうな、しょんぼりした感じ。
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今の世、いろいろ憂うこと、たくさんあるだろうなあ。
posted by Lana-Peace at 16:30| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

食籠(じきろう) 蓋 (鎌倉国宝館)

先日訪れた鎌倉国宝館では7/26までの特集陳列として
平成26年度鎌倉市新指定文化財および新収蔵品がありました。

その中に鎌倉時代の「食籠(じきろう)の蓋」がありました。
食籠とは食べ物を盛る器のこと。
直径30センチくらいありそうな、大きな蓋でした。

鎌倉は地下水位が高いため、木製品が良好な状態で
出土されることが多いのだそうで、
この食籠は御成小学校向かい側あたり、
鎌倉時代の河川跡から出土したものだそうです。

長い年月を経て、全体は暗いトーンになって
文様の一部が消えかかっているところもありますが、
よくよくみると、それはそれは美しい、
見事な草花文が描かれていました。
内面は朱塗りで草花文、
外面は椿、桜、藤、笹、楓の草花文や橋などが描かれています。
椿のおしべは朱漆、花びらと葉っぱは銀蒔絵、
桜は朱漆、楓は銀蒔絵なのだそうです。
直径30pくらいはありそうな、大きな蓋でした。

蓋だけでも、こんなに立派なものであれば
本当に大切に何か食事をいれていたものなのか、
装飾品として利用されたのか、それは不明ですけど、
当時の日本人のアートの力って、すごいことだなあ。

土の下にはたくさんの時間と、誰かの努力が
眠っていますね。

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食籠(じきろう) 蓋
鎌倉時代
若宮大路周辺遺跡群
鎌倉市教育委員会所蔵
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posted by Lana-Peace at 15:33| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年06月07日

「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」

昨日、東京 渋谷区のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されていた
「ボッティチェリとルネサンス フィレンツェの富と美」に行ってみました。
こちら毎週金・土曜日は夜の9時まで開館しているので(入館は20:30まで)
遅い時間に行こうと思っても、便利ですね。
会期が始まってだいぶたっていたせいか
かなり空いていて、ゆっくり回ってみることが出来ました。

こちら12世紀から17世紀にわたる展示物はフィレンツェの経済発展に伴う
芸術の旺盛が80点の展示によって表現されていました。
6/28まで開催されています。

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posted by Lana-Peace at 19:00| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年03月22日

クロード・モネ「睡蓮」(ポートランド美術館所蔵)

ポートランド美術館にはクロード・モネの「睡蓮」が展示されていました。
以前、こちらでモネのことをご紹介しましたが、
この作品が描かれた1914〜1915年の頃は
視力がずいぶん落ちたころだと思います。
またリウマチの悪化も進んでいたことでしょう。
画家としては大きな困難さを抱えながらも成し遂げられた作品。
それを前にすると、人はどんなに多くの困難に直面しても
何かそこから切り抜けていこうとする力があるのだと
改めて思い出されます。

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お花の一部を拡大したもの
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Claude Monet
(French, 1840-1926)
Waterlillies, 1914-15
Oil on canvas
Museum Purchase: Helen Turston Ayer Fund
59.16
アメリカ, ポートランド美術館所蔵
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posted by Lana-Peace at 12:32| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

Printing block for Annotated Compendium of family Rituals(ポートランド美術館)

ポートランド美術館には韓国の家族儀式要約の注釈を
印刷する版木が展示されており、
5年前に韓国の海印寺で見た八万大蔵経の版木を思い出しました。
韓国の印刷用版木の彫りの技術は、本当に見事です。
解説板によると、韓国では9世紀以降、
こうした版木が作られてきたとのこと。
カメラもビデオもない時代、
伝えたい何か大切なことを言葉で残し伝えるために
こうして一字一字彫られたのだなあ…。
それは漢字がわからない言語の国の人にとっても
文字の美しさや文字の持つ重みは伝わるものだろうと思います。

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Printing block for Annotated Compendium of
family Rituals
Korea, 1685
Wood
Gift of David C. Davies
92.97.16
アメリカ, ポートランド美術館所蔵
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posted by Lana-Peace at 12:20| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年03月19日

平家物語図屏風 (ポートランド美術館所蔵)

ポートランド美術館に平家物語図屏風が展示されていました。
「ポートランドで屏風だわ〜」と感嘆。
10年近く前、京都造形芸術大学在籍中、須賀みほ先生の日本美術史の
スクーリング授業、大好きだったのですけど
須賀先生が絵巻の専門家であったことから、
絵巻や屏風に関しては特に熱心に解説がありましたので
それを懐かしく思い出していました、
六曲一双のこの屏風、作者不詳ですけど、実に立派。
とても細かいところの描き方も美しいのです。
たとえば木の枝のしなり具合とか。
こちらポートランドでは街の中の木が
たとえ枝だけであっても何か非常に美しく空に映えるので
ここ数日すごく印象的だったのですけど
まるで400年前の木の命が屏風の中に蘇ってるみたいです。
こちらで紹介したWilliam Trost Richards氏の作品「Marine」と
波の描き方を比べると、ずいぶん違いはあるけれど
平家物語図屏風の波も、強いエネルギーに溢れていますよね。

合戦、戦争ものって芸術にすること自体は
何か争いを美化してしまっているようで、賛成ではないけれど
そこに高い芸術のスキルやそこにかけた人々の努力とか
そういう面だけにフォーカスしてみると
高い価値があるものだなあと思います。

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きれいに修復されていたようだけれど
アメリカに修復の専門家の方、いらっしゃるのかなあ。
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作者不明 平家物語図屏風
Japan,unknown artist
Battle Scenes from The Tale of the Heike
1624/1643
Ink, mineral pigments,and gold on paper
Private Collection
アメリカ, ポートランド美術館所蔵
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posted by Lana-Peace at 15:49| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

細川護煕 信楽鉢 (ポートランド美術館所蔵)

アメリカオレゴン州のポートランド美術館では
1階に日本の美術品が多く展示されていたのですが
細川護熙氏の作品がありました。
細川氏は第79代内閣総理大臣の後
政界引退され、陶芸の道に進まれて
どうやら近年は京都造形芸術大学の学園長も
なさったとのこと。
私は造形大の通信教育部の歴史遺産コースに
2006年から4年間在籍して、歴史や芸術を学んだので、
びっくりな気持ちでいっぱいになりました。
その細川氏の作品はこちらです。

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土のあたたかみが伝わるような深鉢でした。
地元の高校生の課外授業なのか、
ティーンエイジャーがたくさん、
日本の陶芸作品のコーナーをまわりながら、
先生のガイダンスを聞きながら、作品について
熱心にディスカッションしながら見学していたのが
すごく印象的でした。
美術館で何か熱くまじめに語りあう少年たち。
彼らの心の中にはどんなメッセージが届いたのかな。

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細川護煕 信楽鉢
Shigaraki-style Bowl 2008/2011
Stoneware
Gift of Mary and Cheney Cowles
2012.31.2
アメリカ, ポートランド美術館所蔵
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posted by Lana-Peace at 15:23| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年02月08日

色絵梅鳥文茶碗 (サントリー美術館 仁阿弥道八展より)

サントリー美術館 仁阿弥道八展より印象深かった作品のご紹介です。

茶碗の側面に鳥といくつかの梅の花・枝が描かれていますが、
ちょうど鳥の視線をまっすぐ伸ばしたあたりに一輪の梅が
はっきりと描かれています。
それが白泥をわざとちょっと落したかのように、
盛り上がった状態になっています。
ほかにもいくつか梅の花がありますが、平坦なので、
そこだけすごく目を引き、また淡いピンクになっているので、
茶碗がそこにエネルギーが集まっているように見えます。

茶碗という静物が生物になる。
なんだかそんな感じ。
どういう気持ちで絵付けをしたのかな。

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152 色絵梅鳥文茶碗
一方堂焼
江戸時代 19世紀
個人蔵
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posted by Lana-Peace at 00:59| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

銹絵竹鶯文茶碗 (サントリー美術館 仁阿弥道八展より)

サントリー美術館 仁阿弥道八展より印象深かった作品のご紹介です。

あたたかい感じの卵色の茶碗で、
黒のような濃いグレーの銹絵(さびえ)の笹の葉と鶯。
鶯は枝にとまりその先に葉が、茶碗の上縁に向かって伸びています。
今にも飛びそうな鶯は、まさに「これから飛ぶぞ」という
待ちのエネルギーがたくさん詰まったように感じられます。
大きく飛躍する時は、待ちのエネルギーが肝心かもね。
焦ってしまうけど。

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52 銹絵竹鶯文茶碗
仁阿弥道八作 
岡本豊彦画
江戸時代 19世紀
滴翠美術館
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posted by Lana-Peace at 00:57| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年02月06日

色絵狸炉蓋 (サントリー美術館 仁阿弥道八展より)

サントリー美術館 仁阿弥道八展より印象深かった作品のご紹介です。

炉蓋の上に鎮座(!?)している法衣を着た
タヌキを模した炉蓋です。
これが本当にお茶室にあったら、仰天するし、
その場が一気に和みそうです。
ひょうきんな表情で、おなかの太り具合や
まあるい背中の肉付き、
質感がとても頼りがいのあるタヌキの和尚さんのようです。
後ろに回って見ると、ちゃんと法衣の下からしっぽが見えていました。
昔話の分福茶釜を髣髴とさせる、ユーモアにあふれた作品です。
当日は会場の一番最初に展示されていました。

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133 色絵狸炉蓋
仁阿弥道八
江戸時代 19世紀
東京国立博物館
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青磁象嵌菊花文獅子耳三足香炉 (サントリー美術館 仁阿弥道八展より)

サントリー美術館 仁阿弥道八展より印象深かった作品のご紹介です。

あたたかみのあるブロンズ色の香炉です。
則堂通銓(そくどうつうせん)は
仁阿弥から三具足(香炉・燭台・華瓶)が贈られた時に
「子々孫々永宝之」と収納箱に書いたのだそうです。
確かにこれは宝物にしたいと思うなあ。
香炉の縁の両脇に獅子がちょこんとかわいい感じで
つかまっています。
若干潰れたようなその表情が、よい風合いです。
何だかあたたかい感じのする狛犬のようです。
菊花文とおだんごが上に向かって摘みかねられたような図柄が
セットになって香炉を取り囲んでいます。
それも、獅子の雰囲気にとってもあっています。

こういう香炉でお香がたかれた空間は、
何か空気がいっそう浄化されそうです。
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20 青磁象嵌菊花文獅子耳三足香炉
仁阿弥道八
江戸時代 19世紀
建仁寺
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posted by Lana-Peace at 00:48| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2015年02月05日

仁阿弥道八展(東京 サントリー美術館)

昨日、東京 港区のサントリー美術館で開催されている
仁阿弥道八展に行ってきました。
平日だったためか、それほど混雑していたわけではなくて
自分のペースでみることができました。
京焼の名工 仁阿弥道八(にんなみどうはち)は二代高橋道八で
すが、今回の展示会ではお父様である初代高橋道八から
現在活躍されている九代高橋道八迄の作品が展示されていました。
いくつか、印象深かった作品をご紹介しようと思います。

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なお展覧会ホームページのアクセス画面からは
携帯やスマホへ送れる100円割引クーポンマップもありますので
ご利用になるとお得です。
posted by Lana-Peace at 11:11| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年11月13日

聖なる言葉を書き留める書記「鴇(とき)」

古代から動物や鳥の一部を聖なるものとして
考える文化がありますが、
国立東京博物館には鴇(とき)像がありました。

解説板によると、古代エジプトでは
鴇とヒヒが知恵の神トトの聖動物として
考えられていたのだそうです。
そして鴇は「神々の書記」とのこと。

聖なる鴇が書き留めた神様からの言葉は
何だったのかなあ。

そんな風に鳥を眺めてみると
実は、鳥の世界は神秘で満載のような気がしてきます。

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鴇像
木製プトレマイオス朝時代・前304〜前30年
エジプト トゥーナ・エル・ゲベル出土
エジプト文化情報省寄贈
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※写真撮影は職員許可あり
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2014年11月12日

銅製経筒 山梨県柏尾山経塚 出土 康和5(1103)年 (重要文化財) 

先日、こちらでは東門院彰子による書写の法華経が
収められた経箱と伝わる金銅宝相華唐草文経箱(国宝)について
取り上げましたが、東京国立博物館平成館の常設展に
銅製経筒(重要文化財)が展示されていました。

解説板によるとこちらの山梨県甲州市勝沼町 柏尾山経塚から
出土したもの。康和5(1103)年製で東日本最古と言われ、
何と経筒に彫られている銘文は漢字仮名文字
あわせて783文字に及ぶそうです。
一字一字実に丁寧に掘られた美しい文字です。
僧寂円が出家してから埋経するまでの経験
を記されたのだとか。

埋経にまつわる当時の工芸品の技術ってすごいなあと思います。

DSC05939.jpg

1 銅製経筒
2 経筒一部を拡大してみたところ 
※写真は職員撮影許可あり
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銅製経筒(重要文化財)
山梨県甲州市勝沼町 柏尾山経塚出土
康和5(1103)年
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2014年11月08日

右脳と左脳の見事な協調 金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図: 日本国宝展(2014年秋冬 東京国立博物館)

さきほど取り上げた
一字蓮台法華経 普賢菩薩勧発品に引き続き
すばらしい字で作り出す芸術2点目です。

紺地を背景に金光明最勝王経の一字一字が金銀泥で書かれて、
それが塔を形作っているのです。
何層にも重なる屋根のそりかえりも
それが字の向きによって美しく表現されています。
「書く」ということと
全体を司る美を認識していくこと、その同時の作業が
できているとは、右脳と左脳が同時にくるくると
1つの目的に向かって協調しているってことですよね。

パソコンであれば、瞬時に作業が面を拡大したり縮小したり
間違ったら元に戻ってやり直しできるけれども、
当時の方々はすべて肉眼での生の手作業。
すばらしいなあ。

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金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅図
第一幀 2幀(10幀のうち)
平安時代 12世紀
岩手 中尊寺大長寿院
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posted by Lana-Peace at 22:54| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

一字一字が芸術品 一字蓮台法華経 普賢菩薩勧発品: 日本国宝展(2014年秋冬 東京国立博物館)

今日ご紹介したい日本国宝展(東京国立博物館2014年秋〜冬)の逸品は、
すばらしい字で作り出す芸術2点です。
まずは一字蓮台法華経 普賢菩薩勧発品から。

経文の一字一字を仏に見立てて、蓮の葉の上に書いたものです。
蓮の葉は白、茶、緑色などで線描されており、
文字は蓮の花ということでしょうか。
その蓮と字を丸く囲むような線がありました。
場所によっては非常に薄くかすれてはいますが
光の輪のようであり、まるで仏の光背のように思えます。

小さなスペースに葉を描き、そこにぶれない円が描かれ、
美しい文字が書かれていること。
一字も間違いなく書き、描き続けることは
どれほどの集中力の高さだろうかと
感嘆せずにはいられません。
こんなに思いのこもったお経であれば
きっとこれを発注した方の思いは
十分伝わったことだろうと思います。

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一字蓮台法華経 普賢菩薩勧発品
1巻 平安時代 12世紀 奈良 大和文華館
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2014年11月03日

楓蘇芳染螺鈿槽琵琶: 日本国宝展(2014年秋冬 東京国立博物館)

楓蘇芳染螺鈿槽琵琶はとても美しい琵琶です。
絃の張ってある側の撥面(ばちめん)には
白い像に乗った4名が音楽を奏でている様子が
描かれているのですが
その裏、すなわち実際に弾くとお腹側にあたるところに
螺鈿の美しい宝相華がちりばめれていました。
正倉院宝物らしさが満載の装飾です。

琵琶の腹の部分から海老尾にかけて
角面がぎすぎすした感じではなく、
やすりで丁寧に角を丸くしたかのようでした。

実際に奏でるものというよりは
展示装飾としての要素が強い宝物なのかもしれませんが
どこから見ても美しさの隙がありません。

作製された方々の名前は後世に伝わってはいないけれども、
名工の集中力と技量の高さが、非常に伝わって来る逸品です。

そしていつも思うのですが
こうした壊れやすい宝物を、正倉院から東京まで
無事に運んで展示する現代のスタッフの努力も伝わってきます。

日本の技術って昔も今もすごいですね。

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楓蘇芳染螺鈿槽琵琶
(かえで すおうぞめ らでんそうのびわ)
(南倉101 第1号)
奈良時代・8世紀
正倉院宝物
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posted by Lana-Peace at 23:13| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年06月02日

根津美術館「燕子花図と藤花図」

いつかは実物の燕子花図屏風が見たいなあと思っていたので
先月、東京 根津美術館の特別展「燕子花図と藤花図」に行ってきました。
美術館敷地内の庭園には盛りを過ぎた燕子花が咲いていました。
枯れかかったものは、それはまたそれで味わいがあります。

nedu.jpg

ここの庭園はどこもかしこも実に清々しい場所で、
都会の中で違った空気がながれているようでした。
また別途ご紹介しようと思います。

4 燕子花図屏風, 尾形光琳筆, 六曲一双, 紙本金地着色, 18世紀
屏風は高さ150pほどあるため、とても大きい印象を受けました。
成人女性の背丈ほどの燕子花が美しくリズムをもって
咲き乱れているといった様子でしょうか。
その迫力はすごいです。
今はこうして遠目に見ているわけですが、
実際、光琳がこの屏風を納品した時には、
お部屋の中に背の高い燕子花の大きな金屏風がある光景は、
随分華やかでモダンだったことだろうと思います。
特に曇天の梅雨の時期などにはお部屋が明るくなったことでしょう。

当日夕方、美術館内で解説の講演会があり、
そこで雁金屋に残された後ろ身頃の着物の図案(百八十三番)の中に、
燕子花が左肩から右下がりに連なった様子の図案が紹介されました。
光琳はおうちにあったそうしたものから、
ヒントを得たのだろうと思いますが、
日頃、生活の中で目にするものって大事ですね。

光琳の他にも、良い絵がたくさん展示されていました。
根津美術館の収蔵品ってとても素晴らしいです。
その中でいくつか印象深かったものをご紹介しようと思います。

1 四季草花図屏風, 「伊年」印, 六曲一双, 紙本金地着色, 17世紀
70種類の草花が描かれている小さめの屏風ですが、
実に見事な作品で、圧巻といった感じです。
そのどれもに命が吹き込まれている感じです。
右隻の左から三番目には青いテッセンが描かれていたのですが、
とても品よく、テッセンの先にどこからともなく笹がつながって、
隣の二番目まで曲線が描かれています。
一番右端には大根が。土から一寸顔を出して、豊かな葉っぱが描かれていました。
いろいろな要素をうまくまとめて書くって、オーケストラの指揮者のようですね。

15 犬図, 長沢芦雪, 一幅, 紙本墨画淡彩, 18世紀
親犬の左の前足の後ろに隠れている子犬と、
親犬の右後ろ足からこちらを覗いている子犬、その目が何ともかわいいのです。
親犬から少し離れたところで、背中をこちらに向けて親犬を見ている子犬も。
こうしたほのぼのとした空気感は、和みますね。

24 花鳥図襖, 松村景文, 13面の内8面, 紙本着色, 文化10(1813)
襖の引き手の高さに小鳥が配置され、その小鳥はねこやなぎに向かって飛んでいます。
オシドリの目はまんまる。奥ゆかしい品の良さが、どの鳥にも漂った落ち着く襖絵です。

2 竹雀図, 式部輝忠, 2幅のうち, 紙本墨画淡彩, 16世紀
餌を待つ5羽の雀の子どもたち、まさに今餌を持ってこようと親雀が
子ども雀の前に現れた時、一羽だけが反対を向いて餌を自分で探している様子が
何ともお茶目です。

小さな命が、絵の中で生き続けて何かを伝えるって、良いですね。
posted by Lana-Peace at 10:16| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月10日

尾形光琳,中村芳中「燕子花図」

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

3 尾形光琳, 燕子花図(18世紀, 紙本金地着色, 一幅, 35.0x115.0cm, 大阪市立美術館)
パンフレットに写真が出されていたのですけれど、実物を見ると、印刷物よりも
もっと黄色味が茶っぽい感じでした。
遠景から見ると二つの燕子花の山があるのですけれど、
向かって左側の燕子花の葉は長く横に伸びて、
ちょうどその葉先から雫が跳ね飛んだような位置に、丸い落款が。
燕子花のいきいきした生命感が伝わってきそうです。

70 中村芳中, 燕子花図扇面(18〜19世紀, 紙本着色, 一幅, 24.4x62.6cm, 根津美術館)
薄墨に緑青で燕子花が描かれているのですけれど、葉が金泥がたらしこみされていて、
それが枯れかかった感じを実によく表現しているのです。
少し折れてしまったり傷がついた葉は、そこから色が淡黄に変色していきますよね。
あの雰囲気がとても伝わるのです。

同じ題材に向かっても、人が違えば、捉えどころも違いますが、
その時に咲いていた燕子花の命が伝わってくるところは、素晴らしいですね。
来週はいよいよ、根津美術館の尾形光琳 燕子花図屏風を見てこようと思います。
posted by Lana-Peace at 22:39| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月09日

尾形光琳「四季草花図」

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

2 尾形光琳, 四季草花図
(宝永二年(1705)刊, 紙本墨画淡彩, 左隻, 第三面・四面, 36.0x131.0cm, 個人蔵)
第三面の左端には黄色と白のお花が描かれているのですが、
それは普段、道端に何気なく生えているようなお花。
そして隣に並べられた四面の右端には美しい白い立派な菊の絵。
光琳は雑草に混じって生えているようなお花と立派な菊を
同じように取り上げていることが、すごく新鮮でした。
何だかいろいろと意味深く考えさせられますね…。

力強く咲く野の花や雑草を愛し、描いた
三橋節子氏のことが思い出されます。
posted by Lana-Peace at 00:19| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月08日

中村芳中「月に露草図扇面」

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

82 中村芳中, 月に露草図扇面(18〜19世紀, 紙本着色, 一幅, 24.0x65.7cm, 個人蔵)
露草のO字型雄しべと葉脈が金泥で描かれています。
光の具合でちょっと角度を変えて見ると、金色の発色が美しく、驚きました。
芳中の時代は室内で天井から煌々とした明るい蛍光灯をつけたわけではなく、
薄暗い室内の床面に行燈を置いたり、ちょっと高さのある燭台のろうそくに
明りを灯していたはず。
その明りの高さとこの絵の掛けられた高さによって、きっと夜になったら金色が、
随分変わって見えたのだろうなあ。
一枚の絵が、いろいろ変わる。粋な計らいですね。
posted by Lana-Peace at 00:14| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月07日

中村芳中 ほのぼのお坊様

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

152 中村芳中, 托鉢図(18〜19世紀, 紙本墨画,一幅, 116.0x35.0cm, 加島美術)
S字の如く行列したお坊様が托鉢する様子が描かれているのですけれど、
皆様、実に楽しそうなのです。
どんな楽しいことが待っているのかというくらい。修行中だと言うのに。
S字の真ん中あたりには、ひざまずき、お坊様の列に頭を下げる人の姿も。
それがまた、お坊様の喧騒をきゅっと引き締めているような。
当時、こんなにたくさんのお坊様が笑みを浮かべている托鉢の行列、あったのかなあ。
そのような集団にお目にかかるだけでも、何だかご利益がありそうです。
posted by Lana-Peace at 01:11| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月06日

中村芳中 ほのぼの六歌仙

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

132 中村芳中, 六歌仙図(18〜19世紀, 紙本淡彩,一幅, 111.9x27.9cm, 個人蔵)
私が子どもの頃、土曜の夜テレビ放送されていた「まんが日本昔ばなし」を
まさに髣髴とするようなほのぼのした雰囲気の絵です。
市原悦子さんと常田富士男さんのあたたかい声のナレーションが出てきそうです。
中央には平安時代の歌人、文屋康秀が描かれているのですけど、
なぜかうつむき加減。困ったような。ど真ん中なのになあ。
白い眉。でもかわいいお顔です。
posted by Lana-Peace at 00:47| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月05日

中村芳中 ほのぼの神様

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった絵のご紹介です。

126 中村芳中, 大黒図(寛政十年(1798), 紙本淡彩,一幅, 32.1x54.4cm, 個人蔵)
大黒様が大きな袋の向こう側から、こちらに向かって顔をのぞかせています。
そのあたたかな雰囲気とユーモラスさがあふれ出てくる絵です。

127 中村芳中,川渡布袋図(18〜19世紀, 紙本墨画,一幅, 76.9x23.9cm, 個人蔵)
とってもにこやかな布袋様が頭の上に荷物を抱えて、
左手で着物の裾を持って、両足素足でまさに川をじゃぶじゃぶ渡ろうとしている絵です。
豪快な布袋様。どんな福が入っているのかな。

その絵を掲げていたら、たくさんの福がやってくる…そんな気持ちになる、絵。
そういう絵って、いいですね。
posted by Lana-Peace at 18:18| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月04日

「方祝」印「橋に蝙蝠図」

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった蝙蝠(こうもり)の絵のご紹介です。

39 「方祝」印, 橋に蝙蝠図(18世紀, 紙本淡彩, 一幅, 124.5x44.2cm, 根津美術館)
帯状金泥が絵の横に引かれているそうですけど、
ピンクとオレンジが混ざったような実に良い風合い。
夕焼け空と橋の下の川の色とが一体になって、
どこからどこまで空で、
どこからどこまでが川なのかわからないのですけど、
掛け軸を丸められた時の絵の折れ具合の線が、
またそれはそれで空と川の様子に一興を投じているかのようです。
夕暮れ時の平安な空気感が、滲み出ているかのようです。
会場の中で何度も戻って見てしまったのですけど、
今回一番、味わい深く、時間の奥行きが感じられる絵でした。

根津美術館所蔵ってことは、根津に行けばまた見れるかな…。
posted by Lana-Peace at 20:51| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月03日

中村芳中 ほのぼのした鹿

先日訪れた千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」展示より
印象深かった鹿の絵のご紹介です。

62 中村芳中, 雑画巻(18〜19世紀, 絹本着色, 一巻, 28.0x578.0cm, 真田宝物館)
前松代藩主 真田幸弘のために特別に描いたものだそうです。
鹿が描かれているのですが、黒い丸で表現されている目が、実に優しい目。
後ろ向きの鹿の尻尾は白のたらしこみですけど、
ふさふさした毛の感じがとても伝わってくるものでした。
8年前訪れた奈良の春日大社参道付近の鹿の写真を出してみましたが
確かに尾は白。びっくり。
芳中の見た鹿もやっぱり、目と尾の感じは同じようだったのかなあ。

shika2.jpg

shika1.jpg

106 中村芳中, 月に萩鹿図(18〜19世紀, 絹本着色, 一幅, 111.0x41.0cm, 細見美術館)
鹿の目がはっきりまん丸の中に点。かわいいです。

110 中村芳中, 鹿図(18〜19世紀, 紙本墨画, 一幅, 116.1x25.9cm, 個人蔵)
墨一色の濃淡で描かれた鹿はうつむき加減で、すっと立つ姿はとても寂しそう。
眼は黒い丸なのですけど。やっぱり寂しそう。
どうしてなのかな。

命はいつか尽きるものだけれど、
絵の中に残された命は200年以上たっても、こうして生き続けている。
絵に命を吹き込むって、すごいことですね。

posted by Lana-Peace at 14:51| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年05月02日

中村芳中 ほのぼのした鳥と犬

病気で展覧会に行けないこどもたちのために、
行ったつもりの展覧会ということで、
私の勝手なセレクション。印象深かったものをご紹介。
図版を手にする機会があるといいね。

千葉市美術館「光琳を慕う―中村芳中」より

103 中村芳中, 波千鳥図扇面
(18〜19世紀, 紙本着色, 一面, 17.8x56.7cm, 甍堂)
かわいい10羽の鳥。これからどこにいくのかなあ。
まるでマンガのキャラクターのようにかわいいのです。

209 中村芳中, 『光琳画譜』
(享和二年(1802)刊, 木版多色摺絵本, 25.5x18.4cm, うげんやコレクション)
5羽の鳥が今度は口をはっきりとあけているのですが、それがとても楽しそうな表情。

211 中村芳中, 『光琳画譜』
(享和二年(1802)刊, 木版多色摺絵本, 25.7x18.8cm, 千葉市美術館 ラヴィッツ・コレクション)
淡いピンクのような子犬がこちらを向いて、「こんにちは」っていう表情です。

次回は鹿をご紹介しますね。

posted by Lana-Peace at 00:45| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

千葉市美術館「光琳を慕う―中村芳中」

昨日、千葉市美術館の「光琳を慕う―中村芳中」に行ってきました。
(千葉市美術館HPはこちら http://www.ccma-net.jp/index.html
千葉駅から出口を間違えてしまって(単に私の勝手な思い込みのせいなのですけど)
住宅街の方を歩いて千葉公園の方まで行ってしまい、
そこですっかり道を間違えていることに気付いて
駅まで引き返してバスに乗って。
とりあえずホテルに荷物を置いた時には、疲労困憊だったのですけど
気を取り直して、ようやくたどりつきました。

日中の気温の暑さでバテ気味だった私が
すっかり元気が出てくるような、
なんだかほのぼのした絵がたくさんありました。

尾形光琳の数々の名画もさることながら、
中村芳中のほのぼの系は、「どんな気持ちで絵筆を握っていたのかなあ」と
思わずガラスケースに見入ってしまう絵がたくさん。

病気で展覧会に行けない子どもたちにも見せてあげたいな。
ということで、これから私の印象深かった作品をご紹介しようと思います。

ところで、千葉市美術館の行き方は
<私みたいに間違えないでね!>
※千葉駅から行く方は<<東口>>です。
京成バス(バスのりば7)で大学病院行または南矢作行。
「中央3丁目」下車。
 千葉市中央区役所と同じ建物にあります。(それも驚き。)
 一階は復元保存された旧川崎銀行千葉支店の建物。何と昭和2年。
 当時の建築技術って素晴らしいですね。

千葉市美術館「光琳を慕う―中村芳中」は5月11日までです。
お時間ある方は、ぜひどうぞ。
posted by Lana-Peace at 00:37| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年03月30日

旧古河庭園「しだれ桜と美しい洋館」

しだれ桜と言えば、六義園のしだれ桜が広く知られていますが、
昨日訪れた旧古河庭園のしだれ桜も、美しく見頃を迎えていました。
庭園内のバラ園はまだお花が咲いていないためなのか、
散策されている人の数が少ない分、
旧古河庭園のしだれ桜は、人の波を気にせず、
ゆっくり楽しむことができると思います。

furukawa.jpg


洋館は関東大震災の際には、約2,000人もの避難者が、
ここでお世話になったのだそうです。
美しさの中にも、しっかりとした頑丈な安全性を伴っていることは
ジョサイア・コンドル氏の設計、素晴らしいですね。
先日「西洋の中の日本の美」で取り上げた
「ザ・ビューティフル― 英国の唯美主義1860-1900」は
三菱一号美術館で開催されたものでしたが
美しい赤煉瓦の建物は、コンドル氏が設計された三菱一号館を復元されたもの。

町の中に美しい建築物があるということは、とても贅沢なことですね。
その建築物があるだけで、その場所の空気が変わってしまうような力を
たくさん秘めているように思います。
posted by Lana-Peace at 17:47| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸

2014年02月23日

西洋の中の日本の美

今日、東京の三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内)で
「ザ・ビューティフル ー 英国の唯美主義1860-1900」を
見てきました。

その中で、大変印象的な絵がありました。
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フレデリック・レイトン 「 母と子(さくらんぼ)」
1864−65年, カンヴァス, 48.2x82cmm ブラックバーン美術館
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鶴が描かれた金の屏風の前でペルシャ絨毯の上に
若い母親が左肘をついて頭を支えて横たわり、
母親の顔のそばに少女が座り、二人でさくらんぼを食べている様子の絵です。

美しいその屏風は、まるでどこかの博物館や寺社仏閣などで
文化財としてお目にかかるような、襟を正して拝見する…そんな感じをうける
ものでしたから、とてもくつろいだ様子の二人と屏風とが
アンバランスな感じで印象的でした。
靴文化のイギリス人にとって、床の絨毯の上で寝そべることも、
非日常的ですよね。きっと。
あまりに屏風が美しすぎて、つい、女性が絨毯の上に横になり
下から見上げるように眺めていたら、
娘がさくらんぼを持ってきて、母の元にやって来た…
そんな時間が切り取られて収められた絵なのかもしれません。

そういえば2006年7月、京都造形芸術大学で日本美術史の
須賀みほ先生のスクーリング授業を受講したのですが、
実に素晴らしくて、思い出深い授業でした。
その時、須賀先生は屏風について次のようにおっしゃっていました。
「屏風は美術館のように全部の面でみせるのではなくて、
 本当は折っておくもの。また均等に折って置くわけではないので
 折る角度によって絵が変わってくる。
 光の当たり方によってもずいぶん変わる。」

この絵の中の女性は、そうした楽しみ方を知っていたのかもしれませんね。
すっかり無防備にくつろぎ、自由に美を鑑賞している、
それがとても平和な時間の象徴のように思えます。

西洋文化の贅を尽くしたお宅の中でも、
日本の鶴の屏風がひときわ凛とした美しさを放っているように思えるのは
気のせいかな?
posted by Lana-Peace at 22:19| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸