先月、東京 根津美術館の特別展「燕子花図と藤花図」に行ってきました。
美術館敷地内の庭園には盛りを過ぎた燕子花が咲いていました。
枯れかかったものは、それはまたそれで味わいがあります。

ここの庭園はどこもかしこも実に清々しい場所で、
都会の中で違った空気がながれているようでした。
また別途ご紹介しようと思います。
4 燕子花図屏風, 尾形光琳筆, 六曲一双, 紙本金地着色, 18世紀
屏風は高さ150pほどあるため、とても大きい印象を受けました。
成人女性の背丈ほどの燕子花が美しくリズムをもって
咲き乱れているといった様子でしょうか。
その迫力はすごいです。
今はこうして遠目に見ているわけですが、
実際、光琳がこの屏風を納品した時には、
お部屋の中に背の高い燕子花の大きな金屏風がある光景は、
随分華やかでモダンだったことだろうと思います。
特に曇天の梅雨の時期などにはお部屋が明るくなったことでしょう。
当日夕方、美術館内で解説の講演会があり、
そこで雁金屋に残された後ろ身頃の着物の図案(百八十三番)の中に、
燕子花が左肩から右下がりに連なった様子の図案が紹介されました。
光琳はおうちにあったそうしたものから、
ヒントを得たのだろうと思いますが、
日頃、生活の中で目にするものって大事ですね。
光琳の他にも、良い絵がたくさん展示されていました。
根津美術館の収蔵品ってとても素晴らしいです。
その中でいくつか印象深かったものをご紹介しようと思います。
1 四季草花図屏風, 「伊年」印, 六曲一双, 紙本金地着色, 17世紀
70種類の草花が描かれている小さめの屏風ですが、
実に見事な作品で、圧巻といった感じです。
そのどれもに命が吹き込まれている感じです。
右隻の左から三番目には青いテッセンが描かれていたのですが、
とても品よく、テッセンの先にどこからともなく笹がつながって、
隣の二番目まで曲線が描かれています。
一番右端には大根が。土から一寸顔を出して、豊かな葉っぱが描かれていました。
いろいろな要素をうまくまとめて書くって、オーケストラの指揮者のようですね。
15 犬図, 長沢芦雪, 一幅, 紙本墨画淡彩, 18世紀
親犬の左の前足の後ろに隠れている子犬と、
親犬の右後ろ足からこちらを覗いている子犬、その目が何ともかわいいのです。
親犬から少し離れたところで、背中をこちらに向けて親犬を見ている子犬も。
こうしたほのぼのとした空気感は、和みますね。
24 花鳥図襖, 松村景文, 13面の内8面, 紙本着色, 文化10(1813)
襖の引き手の高さに小鳥が配置され、その小鳥はねこやなぎに向かって飛んでいます。
オシドリの目はまんまる。奥ゆかしい品の良さが、どの鳥にも漂った落ち着く襖絵です。
2 竹雀図, 式部輝忠, 2幅のうち, 紙本墨画淡彩, 16世紀
餌を待つ5羽の雀の子どもたち、まさに今餌を持ってこようと親雀が
子ども雀の前に現れた時、一羽だけが反対を向いて餌を自分で探している様子が
何ともお茶目です。
小さな命が、絵の中で生き続けて何かを伝えるって、良いですね。
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