「ザ・ビューティフル ー 英国の唯美主義1860-1900」を
見てきました。
その中で、大変印象的な絵がありました。
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フレデリック・レイトン 「 母と子(さくらんぼ)」
1864−65年, カンヴァス, 48.2x82cmm ブラックバーン美術館
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鶴が描かれた金の屏風の前でペルシャ絨毯の上に
若い母親が左肘をついて頭を支えて横たわり、
母親の顔のそばに少女が座り、二人でさくらんぼを食べている様子の絵です。
美しいその屏風は、まるでどこかの博物館や寺社仏閣などで
文化財としてお目にかかるような、襟を正して拝見する…そんな感じをうける
ものでしたから、とてもくつろいだ様子の二人と屏風とが
アンバランスな感じで印象的でした。
靴文化のイギリス人にとって、床の絨毯の上で寝そべることも、
非日常的ですよね。きっと。
あまりに屏風が美しすぎて、つい、女性が絨毯の上に横になり
下から見上げるように眺めていたら、
娘がさくらんぼを持ってきて、母の元にやって来た…
そんな時間が切り取られて収められた絵なのかもしれません。
そういえば2006年7月、京都造形芸術大学で日本美術史の
須賀みほ先生のスクーリング授業を受講したのですが、
実に素晴らしくて、思い出深い授業でした。
その時、須賀先生は屏風について次のようにおっしゃっていました。
「屏風は美術館のように全部の面でみせるのではなくて、
本当は折っておくもの。また均等に折って置くわけではないので
折る角度によって絵が変わってくる。
光の当たり方によってもずいぶん変わる。」
この絵の中の女性は、そうした楽しみ方を知っていたのかもしれませんね。
すっかり無防備にくつろぎ、自由に美を鑑賞している、
それがとても平和な時間の象徴のように思えます。
西洋文化の贅を尽くしたお宅の中でも、
日本の鶴の屏風がひときわ凛とした美しさを放っているように思えるのは
気のせいかな?
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