2019年05月17日

歩き出そうとする土偶 ―北海道函館市 著保内野遺跡

今から40年以上前、北海道 南茅部町(現在函館市)の家庭菜園から
出土した中空土偶は後に国宝第42号に指定されました。
昨年、函館市縄文文化交流センターの常設展と
国立東京博物館の特別展の両方で見て、
ずっと心に残っていた土偶でした。

1年も経ってようやく時間が出来た時に
研究者の報告を読んでみると
いくつか驚く事実があったことを知りました。
展示している時は凛とした立位の正面像ですが
実はこの土偶、歩き出そうとする様子を表したものなのだそうです。
そしてあえて別の場所で意図的に壊され、一部欠損した状態で
古代人のお墓に埋納されたのだそうです。
見事に作り上げられた土偶
それは壊すことを前提に作られたことを裏付ける痕跡も
CT検査で明らかになったのだそうです。

ああ、そういうことを知った上で
見学すれば良かった。。。

さて、気を取り直して。

死者に対して何らかの丁寧な思いがあったからこそ、
こうした手間と時間のかかる過程を経て、
土偶の埋納が行われたのだろうと思います。
死に至った病気や大けがをリセットし、
死後、のびのびと自由に過ごすことができるように
願われたのではないか……そんな風に(私は勝手に)想像します。



詳しくはこちらに書きました。

Lana-Peaceエッセイ
アート・歴史から考える死生観とグリーフケア
「歩き出そうとする土偶」
(北海道函館市 著保内野遺跡)
http://www.lana-peace.com/2/2-4-083.html