出土した中空土偶は後に国宝第42号に指定されました。
昨年、函館市縄文文化交流センターの常設展と
国立東京博物館の特別展の両方で見て、
ずっと心に残っていた土偶でした。
1年も経ってようやく時間が出来た時に
研究者の報告を読んでみると
いくつか驚く事実があったことを知りました。
展示している時は凛とした立位の正面像ですが
実はこの土偶、歩き出そうとする様子を表したものなのだそうです。
そしてあえて別の場所で意図的に壊され、一部欠損した状態で
古代人のお墓に埋納されたのだそうです。
見事に作り上げられた土偶
それは壊すことを前提に作られたことを裏付ける痕跡も
CT検査で明らかになったのだそうです。
ああ、そういうことを知った上で
見学すれば良かった。。。
さて、気を取り直して。
死者に対して何らかの丁寧な思いがあったからこそ、
こうした手間と時間のかかる過程を経て、
土偶の埋納が行われたのだろうと思います。
死に至った病気や大けがをリセットし、
死後、のびのびと自由に過ごすことができるように
願われたのではないか……そんな風に(私は勝手に)想像します。
詳しくはこちらに書きました。
Lana-Peaceエッセイ
アート・歴史から考える死生観とグリーフケア
「歩き出そうとする土偶」
(北海道函館市 著保内野遺跡)
http://www.lana-peace.com/2/2-4-083.html
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