2018年12月15日

心の中は大雨だったとしても ―涙を見せない父の本当の理由

医師から両親揃って話を聞いた時
初めて耳にした病気の名前。
生まれて数カ月も経っていない赤ちゃんが
難病だと知った母は泣き崩れてしまったのでした。
でもそこで涙なしに父は医師の話を聞き通したのでした。
母は父のことをなんて冷たい人なんだ……と思いました。
我が子の身の上に大変なことが起こっていると聞かされたのに
あなたはちっとも心が動かないのか?と。
心配ではないのか?と。

平静さを装って医師の話をしっかり聞いた父、
でも彼はその後一人、お手洗いの個室にこもって
号泣していたのでした。
家族に大変な悲しいことが起こった時
そのたび全員泣き崩れてしまっては
この先家族はどうなってしまうのか?
だから彼は奥様の前でしっかりした態度をとっていたのだそうです。

そして始まった治療、山あり谷ありです。
良くなったと思えば、また悪くなって
そしてまた良くなって、悪くなって、
生まれて数年間は病院と自宅の行ったり来たりで
随分長い時を過ごしました。
その間も彼は決してこどもの前では涙を見せなかったのでした。

「私はそんなに強い人間じゃない。」
やっぱり父だって一人の人間です。
だから彼は一人ぼっちになれる時間を得た時に
もうこれ以上泣く力も元気も残っていない、
というくらいまで泣くのだそうです。
そうすれば、自分が家族の前で涙を見せなくてすむから。


その話を伺った時、心がジーンとしました。

こどもの前で泣かない親を奨励しているわけではありません。
泣いてもいいし、泣かなくてもいい。
それは人それぞれ、家族それぞれ、
同じ人だって状況によってもちろん変わってくるし。

だけどそこで忘れてはいけないのは
泣かないで医師の話を聞いている親御さんのことを
「しっかり話を聞けている親」とか
「理解力のある親」とかそういう形容で片付けてはいけませんね。
もちろんしっかり、とか理解力ある、ことは正しいけれど
医師の話に頷きながら、相槌を打ちながら、
時折質問を交えながら話を聞いている時
心の中は大雨だということを忘れてはいけない。

そしてこども、家族が不安にならないように
自分がどうあるべきかを考えながら聞いている。
その大事な側面も忘れてはいけない。

お父様のお話を伺って改めてそのように思いました。