2018年09月20日

6,500年前の夭逝したこどもの命と親の愛情が感じられる足形・手形付土製品(北海道函館市 蔵)

2018年5月、北海道の函館市縄文文化交流センターを訪れた時、
とても印象深く釘付けになったものがありました。
それは函館市の遺跡から出土した縄文時代の土版です。
素朴な形と色合いの土版には、
小さなこどもの足形が残されていたのでした。
数千年もの時間を経て、見つかったこの土版。
そこにはっきりと残っていたこどもたちの足指の跡は、
たしかにあの時代、あの場所でこどもたちの人生が
息付いていた事実を物語っていました。

その後2018年8月、東京国立博物館で開催された
特別展「縄文―1万年の美の鼓動」に行ったところ、
なんとあの時の土版がまた出展されていたではありませんか!
土版がかわいらしい声で語りかけてくるかのようでした。

後日、土版出土時の情報が詳しく記された豊原4遺跡報告書を
東京 千代田区の国会図書館で閲覧してみました。
  函館市教育委員会編(2003)『豊原4遺跡』函館市教育委員会
展示会場では館内照度の具合や、ケースの反射などの関係で、
隅々まで十分見れるわけではないし、
私の事前の情報収集が不十分で
肝心な所をいくつも見落としていたのですが
報告書にあった土版の写真、線描画、拓本、その他の文字情報により
会場の展示ではまったく気付けなかったことを知ることができました。
冊子の報告書だけでなく、付帯のCD-Rの中には
パワーポイントやエクセルの画像・データなどが収載されていて
あまりのリアルな情報と膨大な存在感に圧倒されました。
1枚1枚ゆっくり見てみたかったけれど、図書館の閉館時間までには
とても間に合いそうもなかったので、途中で諦めました。
この発掘調査に携わったあらゆる方々の
丁寧な仕事ぶりや努力が伝わってくるようでした。

土版の作成事情など、当時に遡らなければ、
わからないことが多いけれども、
こどもへの愛情や思慕の情があふれているこの土版、
たくさんの人に知ってほしいなと思いました。
心が荒んだ人にはあの土版に残された小さな指の跡を
見てほしいと思います。
いろいろなことを語りかけてくれるはずです。
あの土版は本当に……泣けてくる。

北の大地に眠っていた6500年前の
こどもの命、親の気持ち。

土版の足形の裏面は、なんと手形が残っています。
こどもの手形?そう思っていましたが
そうではありません。
土版に足底を押し当てるために
土版に添えられた大人の手。
それはその子の親の手でしょうか?
表にはこどもの命、裏には親の命。
実物を見ても手形までは気付かなかったのですが
拓本ではその存在がリアルに蘇っています。

土版は土坑墓という当時のお墓から見つかっています。
我が子が夭逝した後、親も亡くなり、
その時、我が子の足形の土版と共に葬られたのだと思います。
死は終わりではない、そう思って。
死は新たな世界での始まりだったのかもしれません。
親子が再会して、また共に暮らす人生の新たな始まり。


北海道函館市の豊原4遺跡から出土した
こどもの足形をとった土版のお話、
詳しくはこちらに書きました。


Lana-Peaceエッセイ
アート・歴史から考える死生観とグリーフケア
「足形・手形付土製品(北海道函館市 蔵)」
http://www.lana-peace.com/2/2-4-078.html