私は1番に銅造阿弥陀如来及両脇侍像(伝橘夫人念持仏)を挙げたいのですけれど
運慶作の栃木・光得寺の大日如来と飛天の納められた厨子は
実に美しかったです。
今回の運慶展の中でも、特に印象に残るものでした。
運慶作の大日如来は見事ですが
蓮華座の下の獅子も素晴らしいし
阿弥陀如来の周囲を取り囲む飛天もすごかった。
阿弥陀如来が配されている平等院鳳凰堂中堂の
内側の壁の飛天を想起いたしました。
こちら昭和60(1985)年、東都文化財保存研究所により
保存修復が行われています。
その報告書の一部がこちらに掲載されていました。
そこからの情報を元に見てみると
円筒形観音開きの厨子は漆塗りで
中央に座す大日如来は木造漆箔造り。
金泥塗りの飛天は白土の雲に乗っています。
国立国会図書館デジタルコレクションに出ている『鑁阿寺小史』(※)
の中に厨子のお話が登場します。
デジタルコレクションなのでコマ番号17/40を見てみると、
24ページ、25ページの開いた写真が登場します。
そこには次のようにありました。
「法名を鑁阿と称し、金胎両部の秘密灌頂檀に入り大法を潟瓶し畢り、
やがて、金剛界大日如来三十七尊の像を三尺七寸の厨子に納め、
自から之を擔ひ飄然国を去り、足跡到るところに偏く、
(この厨子は今菅田村光徳寺(禅宗)に存す、
けたし明治四年神佛混合の際、樺崎八幡宮にありしものを
この寺に移し納めしものなりと云ふ)
注:旧字は新字に改めました
※山越忍空(1897)『鑁阿寺小史』鑁阿寺, 25ページより抜粋
鑁阿寺小史によれば法名を鑁阿と称した足利義兼氏が
誰かに持たせるのではなく、自分で厨子を背負い
ふらりと諸国を巡った、とのこと。
それはどんな心境があったのでしょう……?
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大日如来坐像(重要文化財)
運慶 作
1軀
12〜13世紀
栃木・光得寺 所蔵
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