こどもに先立たれた悲しみだけでなく、
自分の生命についても恐れを持つとき、
父の胸中は、はかりしれない複雑さを帯びてくることでしょう。
19歳年下の妻とまだ3歳の娘のために
大黒柱として頑張らなくてはいけないのですから…
そうした危機的状況を、乗り越えていった先人の例を
ご紹介したいと思います。
19世紀から20世紀にかけて、作曲家、指揮者とし活躍した
オーストリア出身のグスタフ・マーラー
(Gustav Mahler, 1860/7/7-1911/5/18)です。
グスタフは多くの歌曲や交響曲を作曲しましたが、
こちらで紹介したフリードリヒ・リュッケルトの
「こどもの死の歌」に曲を添えたことでも知られています。
長女マリア・アンナに先立たれた後
マーラー夫妻は苦悩のあまり、
お互いの心の間に、かなりきしみが生じてしまいました。
しかしグスタフが1年かけて取り組んだ交響曲
「大地の歌」の作曲過程によって
彼は苦悩した日々を自らの言葉で「美しい時間」
と呼べるようになったのです。
苦悩を美化する必要はありません。
でも、長女マリア・アンナはこの世の人生の去り際に、
父へ残したものは、
苦悩という名の置き土産ばかりではなかったのです。
苦悩を「美しい時間」に昇華させる力を
父にもたらしたのだと思います。
彼女は決して親を悲しませるために、
生まれてきたのではないのですから…。
詳しくはこちらに書きました。
お子さんを亡くした古今東西の人々
「亡き子がくれた美しい時間」
http://www.lana-peace.com/2/2-2-024.html
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