2015年10月04日

ヤン・ファン・ホイエン「釣り人のいる川の風景」(東京富士美術館所蔵)

こちら東京富士美術館所蔵のヤン・ファン・ホイエンの作品
「釣り人のいる川の風景」です。

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何だかすごくいいなあ。いいなあ。

近くに寄ってみると、これとってもよく描きこまれているのです。
たとえば画面の右下隅には3人の男性は網で魚をとっているのだけど
どれどれ、って水面の下の網の様子をうかがっている感じが
よく表れているでしょう。
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それから奥の小舟の人たちは話しているその雰囲気までもが
伝わってきそうだと思いませんか?
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そして左下の牛たちの表情はすごく穏やかで
漁をする人間のそばで、「我、関せず」って感じで
牛は牛の世界で生きている。
牛には牛の時間が流れている。
何だか牛が主人公って感じもしてくるのです。
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川岸に座っている牛の優しい眼差しは
「あなたには、あなたの時間がある。
 あなたは自分の人生を、生きなさい。」
って、静かに言っているみたい(と勝手に自分で想像したり)。
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草を食む牛の周りには草の1本1本まで
見て取ることができます。
まるで風が吹いたらそよそよ風になびくような
そんな草です。
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草にもそういう命が、この絵には宿っています。

決して快晴の澄み渡った空じゃないのに、
その空は、それが重苦しいわけでもなく。

そしてファン・ホイエンのこの絵、
人や牛、物の影がとてもきれいに描かれているのですよ。

普段気に留めない影。
でも影があるってことは、
そこに光を遮る何かが存在したってことだものね。
そしてその存在が消えれば、影も消えちゃうわけだけど。
あるはずのないものが、生まれる一瞬って
はかないけど、美しいなあ。

370年位前に描かれたこの作品、
深い含蓄と余韻を伴うものだから
会場の中を進んだ後も、もう1回そこに戻ってみたけど
やっぱり、惹かれる。
色合いもいいなあ。
ファン・ホイエンはどんなこと考えて、
この作品、描いたのかな。
ファン・ホイエンに会ったら、ぜひ聞いてみたいな。

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釣り人のいる川の風景
Riverscape with Fishermen
ヤン・ファン・ホイエン
Jan van Goyen
1644年
油彩、カンヴァス
100.6×134.9cm
東京富士美術館所蔵
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※絵画撮影は職員の許可を得たものです。
posted by Lana-Peace at 18:15| アート / 歴史 絵画・彫刻・陶芸