白い高床式校倉風建築です。
きっと正倉院を参考にしたのだろうなあ。
さてその入り口扉には、大正・昭和に活躍された
小川三知氏の美しいステンドグラスがはめ込まれています。

どうしてこういうデザインなのかと思いましたら、
どうやら「鎌倉」の枕詞となっている
「星月夜」にちなんだものだとか。
知らなかったなあ。

随分素敵な話と思って、いろいろ検索してみたところ、
たどり着いたのが、国文学研究資料館の電子資料館のサイト。
こちらに宮内庁書陵部が所蔵している『永久四年百首 和歌上下』が
画像としてアップされておりました。
この中で86コマ目の画像に次の歌が詠まれています。
右端から2つ目の歌です。
崩し文字で書いてあるので、書き出してみるとこんな感じ。
「我ひとりかまくら山をこえゆけばほし月夜こそ嬉しかりけれ」常陸
この作者「常陸」とは『永久四年百首』の巻頭作者紹介のページに
常陸 肥後守 定成女 本名肥後 皇后宮女房とありますので
女性の詠まれた詩ですね。
どんな背景があったのかなあ。
ひとりぼっちで鎌倉山を越える時、
見上げた空には星と月。
明るい夜が心強いのか
あるいは自分が山越えする様子を天から見ているのは
星と月だけ、という状況が嬉しいとか、ありがたいとか…。
想像はいろいろ駆け巡るけど、
そんなことを考えて、改めてこのステンドグラスを見ると
すごく、奥深い感じがしませんか?
このステンドグラス自体に息づく命があるような
そんな気がしてきます。
月の色が白で、星が水色で、
その周りが黄色の濃淡。
陽光に照らされると、星と月は清々しく光り、
周囲の黄色のステンドグラスのおかげで
白い月は一層冴えわたった光を放つようです。
鎌倉国宝館にお越しの際は、
ぜひ、扉のステンドグラスにもご注目を。
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