2015年02月01日

文学作品の中で生きるアート 盛岡天満宮の狛犬と石川啄木『葬列』

こちらで盛岡天満宮の狛犬をご紹介しましたが
この狛犬、石川啄木の『葬列』に登場する狛犬です。
どのあたりに?という方のために青空文庫より引用してみますね。
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(※旧漢字は当方が改めています)
「詣づる人又人の手で撫でられて、其不恰好な頭は黒く膏光りがして居る。
そして、其又顏といつたら、蓋し是れ天下の珍といふべきであらう。
唯極めて無造作に凸凹を造(こしら)へた丈けで醜くもあり、
馬鹿気ても居るが、克(よ)く見ると実に親しむべき愛嬌のある顏だ。
全く世事を超越した高士の俤、イヤ、それよりも一段と俗に離れた、
俺は生れてから未だ世の中といふものが西にあるか東にあるか知らないのだ、
と云つた樣な顔だ。自分は昔、よく友人と此処へ遊びに来ては、
『石狛(こまいぬ)よ、汝も亦詩を解する奴だ。』とか、
『石狛よ、汝も亦吾党の士だ。』とか云つて、
幾度も幾度も杖で此不恰好な頭を擲つたものだ。
然し今日は、幸ひ杖を携へて居なかつたので、丁寧に手で撫でてやつた。
目を転ずると、杉の木立の隙から見える限り、野も山も美しく薄紅葉して居る。
宛然(さながら)一幅の風景画の傑作だ。
周匝(あたり)には心地よい秋草の香が流れて居る。
此香は又自分を十幾年の昔に返した。」

引用サイト:青空文庫 石川啄木『葬列』
底本:「石川啄木作品集 第二巻」昭和出版社
   1970(昭和45)年11月20日発行
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狛犬の頭は黒光りはしていなかったけど、
もしかしてこれは新しく作り替えられたのかなあ?
まあそれはともかく。

啄木は「一幅の風景画の傑作」と称した天神山からの風景、
2014年5月に訪れた時は「秋草の香」はなかったけど
新緑が目にも鮮やかなこんな感じでした。

DSC00924.jpg

山の麓に広がる街がとってもいい感じ。

文学作品の中に登場したものが、新しい時代になっても
同じようにそこにあるっていいですね。
そして文学作品の中の命は不滅だから。
posted by Lana-Peace at 16:51| アート / 歴史 本・映像