思春期に長患いをすると
周りと比べて卑屈になったり、
焦りが苛立ちに拍車をかけて
自分の身の上を不運だと嘆いて
自暴自棄になったり。
どうして自分ばっかりこんな目に。
そういう風に思います。
そこで真正面に正論を説いてみたところで
思春期さんたちは決して耳を貸さない。
そして自分の作った狭い世界観の中だけで良い悪いを考えて
自分が自分を苦しめる。
そんな時、読んでほしいなと思うもの
山本周五郎の「石ころ」です。
私は時代物小説はどこか敬遠しがちで
藤沢周平の「山桜」とか一部の本しか手にしてこなかったけれど
今回、初めて窪田等さんのYouTubeの朗読で知りました。
<『石ころ』作:山本周五郎 朗読:窪田等>
松尾という名の女性を主人公に、
御隠居曲輪の縄屋の縁先で年頃の女性たちが
噂話に興じている様子から始まります。
最後は兄の凱旋祝いのために出かけたはずの実家で
図らずも松尾は夫の真実の姿を知るという展開で終わります。
うだつの上がらない極めて平凡で
ともすると人から馬鹿にされたり揶揄される対象であった人が
ごくありふれた石ころを「無くてはならないもの」と言う。
石ころが人の眼につかないところでじっと頑張っていることを知っていて
「そういう素朴さを学びたい」と言う。
若い人たちは何を感じるのかな。
人それぞれいろいろ得るものは違うだろうけれど
今見ている方向がすべてだとは思ってほしくない
そう感じるものでした。
いろいろなものにいろいろな価値がある。
その価値を気付く人もいれば
全く見過ごす人もいる。
私も高校生くらいの時にこの本に出会いたかったな。
あまり固いこと考えないで
窪田さんのとても良い波動の声と共に名作の世界を知るひと時も
それだけでも十分良いと思います。
耳慣れない歴史用語も出てくるけれど
何回も聞くと情景が浮かぶようになってきます。
長患いで「何だかなー」って思っている思春期さんへ
お伝えしたいなと思って。
2023年01月28日
長患いで「何だかなー」って思っている思春期さんへお伝えしたいこと ――山本周五郎「石ころ」
posted by Lana-Peace at 16:29| 病気のこどもと家族のために アートから考える病気との共生